経営者が知っておくべきセクハラの定義と対処法

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2018年7月3日

経営者が知っておくべきセクハラの定義と対処法

セクハラによる辞任問題が相継いでいます。
国内では、福田淳一財務省事務次官や日本ハムの社長、役員の辞任が記憶に新しいかと思います。かつては横山ノック大阪府知事が高額の賠償を命じる判決を受け、辞任するなどの問題も起きました。



1987年に福岡の出版社に勤める女性が提訴した事件がセクハラ訴訟の第1号と言われており、1989年には「セクシャルハラスメント(セクハラ)」という言葉が流行語大賞となって一気にメジャーになりました。
その後、セクハラの意味づけが議論され、2007年の男女雇用機会均等法の改正により、企業にはセクハラの防止に必要な措置をとることが法的に義務づけられました。



●セクハラの定義とは?

一方で、セクハラという言葉は知っているけど、具体的に何がセクハラに該当するのかを正確に理解されている方は少ないのではないでしょうか。

 

セクハラの定義について、男女雇用機会均等法11条1項では、以下のように規定しています。



事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。



なんだか堅苦しい言葉が並んでいますが、要するにセクハラには2つのタイプがあるということです。

●対価型セクハラと環境型セクハラ

【対価型セクハラ】

①職場において労働者に対して性的な言動があること

②労働者がそれに対して何らかの反応をすること

③その労働者が自己の反応により不利益な労働条件を押しつけられること



典型的には、男性が女性の体に触る、交際相手の有無や生理の有無を聞く、つきまとうなどをして、女性が男性と距離を取ったり抗議をすると、転勤や退職などの不利益を押しつけられるという事例です。



対価型のセクハラは、誰の目に見ても問題は明らかで(いわゆる)グレーゾーンの余地はほとんどありません。このような行為が社内で見逃されると、従業員は会社に対する信頼を失い、セクハラの行為者もお咎めがないことをいいことに行為を繰り返すことになり、モラルは低下する一方です。

ですから、このような行為は絶対見逃してはならず、然るべき担当部署等に通報して、社内規定に従った処罰(懲戒)を行うようにしなければなりません。



また、このような対価型セクハラの行為者は、自分の行為が間違っていないという確信犯的な考えの人が多いのが特徴です。したがって、このようなセクハラを予防するには、「このような行為をすると、必ず訴えられて、必ず負ける」という事例を社内外で広報し、情報の周知と共有による心のブレーキを働かせるしかありません。



【環境型セクハラ】

職場において労働者に対して性的な言動が行われること

その結果、その労働者の労働環境が害されること



この定義は、対価型セクハラと比べて抽象的なため、多くのグレーゾーンを生みます。

そこで、法律上の定義を飛び越え、環境型セクハラを「意図的セクハラ」と「無意識セクハラ」という2つのパターンに分けて考えてみましょう。

●意図的セクハラと無意識セクハラ

[意図的セクハラ]

→相手に対して持つ悪感情が昂じて、相手を辱めてやろう、貶めてやろう、からかってやろう、バカにしてやろうといった「加害の意図」に基づいて、性的な話題(異性交遊、体型、年齢、容姿等)で嫌がらせを言う言動



これらは、性的な話題で誹謗中傷している点が特徴です。

一方で、

・性的関係を迫る行動などがない

・不利益な労働条件を課すという要素もない

・行為者に加害の意図もない

・行為者の言動にセクハラだと結論づける客観的な理由が見当たらない

というものがあります。これを「無意識セクハラ」と呼ぶことにします。



[無意識セクハラ]

→行為者にはセクハラする意図も認識も全くなく、その言動もあってはならない言動だと断定はできないけれども、相手が何らかの理由でセクハラだと感じて反応する行為者の言動



典型的には

・ちゃん付け、女の子呼ばわり、おばさん呼ばわり

・職場にわいせつなポスターを貼る

・ボディタッチ

・下ネタ

・就業時間後の飲食への誘い

・カラオケでのデュエットの要求

・宴席でのお酌の要求

・身体的特徴、年齢等の冷やかし



意図的セクハラは、対価型セクハラと同様の対処や予防法を取ることができます。一方で、無意識セクハラこそが、セクハラの範囲を分かりにくくしているのだということが分かります。



行為者は、相手を加害する意図を持っておらず、むしろ親愛の情や場を和ませる意図を持って言動を行っていることもあります。それでもこれらの言動を受けた多くの人は「気分が悪い、何とかしてほしい」と感じるのです。したがって、今のご時世において、無意識セクハラは、相手がセクハラだと感じるがゆえにセクハラになると結論づけなければなりません。

●セクハラと感じることの合理性・妥当性

ただし、注意しなければならないのは、相手がセクハラだと感じれば全てがセクハラになるのではなく、相手がセクハラだと感じることに合理性、妥当性がなければなりません。



「あれ、髪型変えたんだね。似合うよ。」

気の合う先輩から言われると嬉しいのに、気の合わない上司から言われると不快に感じるとしても、それは単なる好き嫌いの感情であって、合理性、妥当性がないため、言動はセクハラにあたりません。そうでなければ「あの上司は、生きてるだけでセクハラだ!」などという理屈が通ってしまいかねません(笑)



●無意識セクハラの対応法

ここで2つの事例を挙げますので、あなたなら何というのかを考えてみてください。どちらも、実際の職場で起こりうる事例です。



■事例1■

A課長は、部下のB子さんの仕事ぶりを見て、能力や性格を高く評価していました。ある日、A課長とB子さんは仕事の話をしていたとき、いつものようにB子さんの分析力や提案力に感心したA課長は、B子さんをほめるつもりで、「いつもながらすごい分析力だなぁ。本当に君が男だったらなぁ」と言いました。

A課長は真面目で実直な性格で、およそセクハラとは縁遠い人物であり、そのことはB子さんも認めていた。しかし、B子さんは上長であるあなたのところに「A課長は私をほめようとしていて、セクハラの意図がないことは分かっています。しかし、『男だったらなぁ』という言葉はセクハラなので、A課長のことを注意してください」と申し出てきました。

あなたは、B子さんとA課長になんと言いますか?



■事例2■

社員Cさんが、会社のデスクに家族写真を飾っていることについて、別の社員Dさんから「アレは、セクハラだと思う」との申し出がありました。社内には結婚したくてもできない人や、子供が欲しくてもできない人がいるのだから、そういう人たちにも配慮すべきだというのがDさんの言い分です。

あなたは、Dさんになんと言いますか?



事例1について、多くの方は、「君が男だったらなぁ」という言葉には、男女差別的な意味が込められており、これをセクハラだと感じたB子さんの感覚には合理性・妥当性があるのでセクハラになると考えるのではないでしょうか。

ところが、B子さんやA課長になんと伝えるかというと、B子さんには「A課長にも悪気はないんだから、そこは分かってほしい。言い方には問題があるので注意しておくから」と言い、A課長には、「セクハラの意図がないのは分かっているけど、気にする人もいるから言葉遣いには気を付けてほしい」などと考える人が多いのです。

これでは、A課長にもB子さんにも、この言動がセクハラに当たるのか、その理由がなぜなのかが伝わりません。しっかりと結論と理由を伝えられなければ、同じような無意識セクハラが繰り返されてしまう危険があります。

●合理性、妥当性の判断基準

相手方がセクハラだと感じることに合理性・妥当性があるかを判断するにあたっては、「過去のセクハラ認定事例との類似性」「行為者の言動が常識に反していないか」などの要素を考慮することになりますが、これに加えて、「行為者の言動がその会社の社風、伝統、理念に照らして許されるか」という観点からの検討も大切になってきます。



事例2において、社内の大多数が「結婚していない人や子供が欲しくてもできない人のことを考えると、家族写真を飾るのもセクハラになる」と考える場合には、その会社にとってはセクハラになるのです。そもそもハラスメントとは、職場を運営していく上であってはならない言動のことをいいますから、職場の大多数が良くないことだと考える行為はセクハラと判断されても仕方がないのです。



一方で、たとえば「家族第一主義」を社是とする会社で、実際に家族写真をデスクに飾る社員が多いような場合には、社是と一致する言動はセクハラには該当しないという結論が妥当なのです。



●無意識セクハラの対応法

セクハラの加害者が、被害者に対して慰謝料などの損害賠償を支払い義務が発生したり、社内の規定に従って懲戒処分を受けることがあるのはもちろんのこと、会社はセクハラを防止して安心に働ける職場を提供する義務を負っていますので、会社も被害者に対して損害賠償責任を負うことがあります。

さらには、セクハラについて厚生労働大臣の指導を受けたにもかかわらずそれに従わなかった場合には、男女雇用機会均等法に基づき会社名が公表されます。

法律が要求する予防措置としては、以下のような例が考えられます。

・パンフレットの配布やポスターの掲示などによる意識づけ

・社員教育の一環としてのセクハラ防止研修会の開催

・アンケート調査などによるセクハラの実態の把握

・被害社員が相談できるような相談窓口・部署の設置

●時代と共に変わるセクハラ概念

セクハラに該当する行為も時代によって移り変わっていきます。したがって「このくらいなら、みんなやってるし大丈夫」という昔の常識は通用しません。これは、年々市民権を失い肩身が狭い思いをしている愛煙家の喫煙権と似ているのかもしれません。